ホンダと日産自動車の経営統合協議は、わずか1か月半で「破談」に終わった。パートナーを失った日産は、再び経営危機に立たされている。かつて、経営トップとして日産を破綻寸前の危機から救い、その後に“追放”されたカルロス・ゴーン元会長は、この現状をどう見るのか。レバノン・ベイルートのゴーン氏にリモート・インタビューを行なった。ここでは日産とホンダの破談の原因について、ゴーン氏の見解を紹介する。
「日産はあまりにもプライドが高すぎた」
書斎と思しき部屋の壁に作り付けられた棚を背に座るカルロス・ゴーン氏。表情は厳しく、日産の経営者として辣腕を振るっていた頃と変わらない迫力で、「破談はあらかじめ分かっていたことだ」と舌鋒鋭く問題に斬り込んでいった──。 昨年12月末、大幅な業績悪化に直面した日産は、ホンダと経営統合に向けた協議を開始すると発表。日産傘下の三菱自動車を含めれば世界販売台数で3位につけるはずだったが、今年2月に入り一転、「破談」となった。 「日産自身による経営再建」を統合の条件としていたホンダが、日産の示したリストラ案に納得せず、「子会社化」を提案したことで日産が猛反発。6日をもって統合協議は打ち切られた。その後、台湾の鴻海精密工業が日産株を持つ仏ルノーに接触し、日産の経営をめぐる騒動はまだまだ続く。 その日産が1999年に経営危機に陥った際、ルノーから送り込まれたのが、「コストカッター」の異名を取るゴーン氏だった。破綻寸前の状態から1年で黒字転換を達成し、V字回復の立役者となった。 ただ、2018年には金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕・起訴される。翌年には保釈中に中東・レバノンへ密出国するという“逃亡劇”を見せ、日本中に衝撃が走った。 そのゴーン氏は、自身が去った後に再び危機に陥った日産をどう見るか。レバノン・ベイルートのゴーン氏にリモート・インタビューを行なった。
──日産とホンダの破談の原因をどう見るか。 「同じ日本企業として強みも弱みも重複する部分が多い日産とホンダには補完性がない。仮に経営統合しても、成功するとは思えなかった。 今回は、日産が話し合いを打ち切った。ホンダによる『子会社化』の提案を受け入れるには、日産はプライドがあまりにも高すぎた。自分たちのブランド、そして成し遂げてきたことに誇りを持つ日産の従業員にとって、子会社化は本当に飲み込みにくいことだったろう。 それでもホンダが子会社化を望んだのは、日産の経営陣の完全な交代が必要だと理解していたからだと私は思う。経営陣が脆弱な会社と手を組めないのは当然だ」 ──全従業員の7%にあたる9000人の削減や世界生産能力の2割削減など日産が示した「リストラ案」が、ホンダの求める水準に達しなかったとの報道もあった。 「問題はコスト削減だけではない。むしろ“リーダーシップ”の問題だ。適切な製品に投資し、ブランドを強化し、将来のビジョンを持たなければならない。技術戦略も必要だ。率直に言って、今の日産にはこれらすべてが存在していない」 * * * マネーポストWEBでは、関連記事《【全文公開】カルロス・ゴーン氏独占インタビュー「日産とホンダの破談の原因」「海外逃亡への批判」「新・日産リバイバルプラン」「現経営陣への最後通告」…すべて語った》にて、インタビュー全文を掲載している。 聞き手/宮下洋一(ジャーナリスト) ※週刊ポスト2025年2月28日・3月7日号
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