ファーウェイは2025年2月18日、グローバル市場向け発表会をマレーシア・クアラルンプールで開催し、画面を3つに折りたためるスマートフォン「Mate XT Ultimate Design」などを発表した。 【写真で見る】グローバル向け発表会をクアラルンプールで開催 Mate XT Ultimate Designは2024年9月に中国で発表され、同国ではすでに販売中の「世界初」を誇る三つ折り型スマートフォンだ。ファーウェイはアメリカ政府からさまざまな制裁を受けながらも、技術力で乗り越え、業界での存在感を再び示そうとしている。
■かつてはアップルよりも売れていた ファーウェイのスマートフォンが過去に日本でも販売され、人気製品になっていたことを覚えている人もいるだろう。老舗のカメラメーカー、ライカ社と協業した高性能なカメラを搭載した同社のスマートフォンは、KDDIとソフトバンクからも販売された。 製品としての魅力は日本のキャリアも認めるほどだったのだ。低価格なモデルから高性能なプレミアムモデルまで、ファーウェイのスマートフォンは世界各国で売れまくっていた。
2024年の世界スマートフォン出荷台数シェアは1位がアップル、2位サムスン、3位シャオミと続く。しかし、今からわずか5年前はサムスン、ファーウェイ、アップルの順であり、ファーウェイのスマートフォンはiPhoneより売れていた。 2020年には瞬間的にサムスンを抜き、世界1位の座を奪い取ったこともあった。ファーウェイのスマートフォン新製品は、出すモデルすべてがヒットしていたのだ。 だが、2019年5月、アメリカ政府が中国ハイテク企業に対し、安全保障上の懸念から自国技術やそれを使った製品の出荷を停止し、同盟国にも同調するように働きかけた。これによりファーウェイは壊滅的な打撃を受ける。
特にスマートフォンの心臓部である「SoC: System on a Chip」は、ファーウェイの子会社が独自に設計した「Kirin」(キリン)と呼ぶモデルを台湾の半導体受託製造企業であるTSMC社が製造していた。 しかし、SoC製造にアメリカの技術が関与していることから、TMSCはファーウェイからの委託を中止。ファーウェイのスマートフォン開発は一気に停滞し、各国から撤退。主戦場を中国のみとし、グローバル市場での存在感は薄れてしまった。
それでもスマートウォッチやワイヤレスイヤホンなど、制裁の影響の少ない製品開発は地道に進めていった。また、SoCの開発の手は緩めず、中国のSMIC(中芯国際集成電路製造)社と共に国産化を果たした。 2023年秋には、ついにSMIC製造のSoCを搭載した「Mate 60」シリーズのスマートフォンを発売、中国では同時期に発売されたアップルの「iPhone 15」シリーズを販売不振にさせたほどだ。 ■技術力で困難を乗り越える
ファーウェイはスマートフォンを動かすオペレーティングシステム(OS)も脱グーグルを図り自社開発を行った。アメリカ政府による包囲網を潜り抜けるために、その抜け道を探すのではなく、真っ向から技術力で立ち向かったのだ。その集大成ともいえる製品が今回発表されたMate XT Ultimate Designである。 本来、折り曲げることのできないスマートフォンの画面を折り重なるようにたたむことができる「折りたたみスマートフォン」は、数年前までは夢の製品と考えられていた。それが今ではサムスンやグーグル、モトローラなど多くのメーカーが製品化している。
グローバル市場で見ると大手企業で折りたたみスマートフォンを製品化していないのはアップルだけだ。現在市販されている折りたたみスマートフォンは、画面を縦向き、あるいは横向きにたたむことができる。「開くか、閉じるか」という二つ折りタイプの画面を搭載している。 ファーウェイはこの二つ折りスマートフォンでも実は先駆者だ。2019年2月にサムスンが大手メーカーとして世界初の折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」を発表するや、その2日後に「Mate X」を公開した。スマートフォンの世界シェアで1位2位を争う両者が、次世代モデルとして同時期に折りたたみモデルを市場に投入したのだ。両者は毎年、折りたたみスマートフォンの新製品を投入することで技術力の高さを競っていた。
初代の製品登場から4年後になる2023年3月、この競争でファーウェイが大きくサムスンを引き離した。新製品「Mate X3」は折りたたみスマートフォンでありながら、重量は「iPhone 14 Pro Max」より1g軽い239gを実現。折りたたんだときの厚さも11.1mmと薄く、「折りたたみスマホは分厚くて重い」という概念を消し去った。 ファーウェイのこの新製品は、ほかのメーカーにも大きなショックを与え、各社は折りたたみスマートフォンの高性能化を図るだけではなく、「より薄く、より軽く」と本体サイズの薄型軽量化に注力していった。サムスン電子が2024年10月に対抗したモデルを出すなど、折りたたみスマートフォン市場は混沌とした競争が繰り広げられている。
■三つ折りでトップの座を確固たるものに 大手調査会社のカウンターポイントによると、2024年第1四半期の世界の折りたたみスマートフォン市場で、ファーウェイがサムスンを抜いて1位となった。Mate X3の後継モデルなどが好調なこともあり、特に中国国内で販売台数を大きく伸ばしている。 もちろん、他社もファーウェイに対して追従の手を緩めておらず、OPPOは今年2月18日に世界最薄・最軽量の折りたたみモデル「Find N5」を発表するなど、技術革新の動きは加速化している。
この過熱する折りたたみスマートフォンの開発競争の中で、ファーウェイは他社に先駆け、三つ折りモデルを製品化した。画面を「Z」字型に折りたたむ構造は、ヒンジ部分の画面収縮の処理やヒンジの小型化など高い技術が必要だ。 ここ1〜2年の間にサムスンディスプレイ社などディスプレイメーカーが試作品を公開しているが、スマートフォンとして世に送りだした例はない。ファーウェイは中国のディスプレイメーカー、BOE社と協業してこの難問に取り組み、スマートフォンの歴史の1ページに残る製品を商用化したのである。
ただし、三つ折りスマートフォンは誰もが使う一般的な製品ではない。価格が高価であり、クアラルンプールで行われた発表会では3499ユーロ、約55万6000円とアナウンスされた。また、ヒンジを2つ持つ構造のため、一般的なスマートフォンより落下などに対する強度も弱い。製造コストが高いだけではなく、修理時のパーツコストも高いものになる。 とはいえ、目の前で普通のスマートフォンが横に開き、さらにもう1枚Z字型に開く様を見れば、この製品がタダモノではないことは誰にでもわかる。
そして、完全に開いた状態では一般的なタブレットと同じ大きさ(10.2インチ)になるため、スプレッドシートやプレゼン資料を開いたり、あるいは大きなキャンバスにペンを使って快適に文字やイラストを手書きすることもできる。三つ折りスマートフォンはそのメーカーの知名度や技術力の高さを誇示するだけでなく、実用性も高いのである。 ファーウェイは、前述したMate 60シリーズの後も続々とスマートフォンの新製品を出しており、グローバル市場ではまだ販売数は伸びていないものの、中国国内ではすでにアップルを抜いて2位になった(2024年、IDC調査)。
同社のラインナップに新たに加わるMate XT Ultimate Designは、多くの人に「ファーウェイ」の名を再び思い出させるものになり、世界各国でファーウェイ製品の販売台数増を後押しするものになるだろう。スマートフォン市場でファーウェイは着実に復活の道を上り始めている。
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