平安時代に長編小説「源氏物語」を執筆した紫式部の人生を描くNHK大河ドラマ「光る君へ」。平安時代の貴族社会を生々しく描きだすとともに、まひろ(後の紫式部、吉高由里子)と藤原道長(柄本佑)の切ないラブストーリーが展開した。第48回の最終回(12月15日放送予定)を前に、脚本を担当した大石静さん(73)に、舞台裏を聞いた。 【写真】吉高由里子「『あのマダム(脚本の大石静)め』って思いました」 ■平安は「勤勉な時代」 およそ3年4カ月にわたる執筆を終え、今年9月下旬に脱稿した。「つまんなくなっちゃった気分です。苦しかったけれど、1つの目標に向かって走り続けている時がすてきでした」と明かす。 以前から夜型だったが、今作の執筆では完全に昼夜逆転した生活に。「宅急便なんかを受け取った後、平安時代にはすぐに戻れない。どんどん夜型が激しくなっちゃって、危険だなと思いましたけど、夜のほうが集中しました」 前回脚本を担当した大河ドラマ「功名が辻」は司馬遼太郎が原作で戦国時代が舞台だった。「使えるエピソードは5話分ぐらいしかなかったのでオリジナルをやっている気分でした。それでも戦国時代は基礎知識があったし、私も元々好きでした」と語る。 「光る君へ」は原作のないオリジナル脚本。紫式部の名前や源氏物語は知ってはいたが、平安時代は「何も知らない」状態から始まった。だが、執筆を通して「平安の、1000年前の日本の出来事を知ることができたのは、すてきなことでした」と振り返る。 紫式部の人生は明らかになっていないことも多い。時代考証の倉本一宏さんの本を読み、ひとつの方向性が決まった。「倉本先生がお書きになっているものを読んだんですが、平安時代を怠惰な貴族の時代と位置づけたのは明治政府ということでした。富国強兵を国策としたから、戦国時代を美化した。対照的に怠惰な時代として平安時代を位置づけた。倉本先生は『平安時代を研究して、もっと勤勉ですてきな時代だったってことを言いたいんです』っておっしゃった。私の胸にそれが染みて、このドラマでそれを描こうと思いました」と語る。 ■まひろの人生に重ねて
「光る君へ」で描いたのは、あくまで紫式部であるまひろの生涯だ。「源氏物語は一切劇中劇でも出さない」と最初から決まっていた。「源氏物語をやったら大失敗したと思います。事象としては寝たり起きたりしてるだけ。そんなものを1年間見たって何にも面白くない」と断言する。
あらすじは、制作統括の内田ゆきさん、チーフ演出の中島由貴さんと3人で練り上げた。1000年後も読み継がれる源氏物語が生まれた背景。それを書いた人物はどう生きたのか。当時の摂関政治、内裏の権力闘争を交えて描く。文学者を主役にした大河ドラマの軸が決まった。
源氏物語をイメージさせるエピソードは、まひろと道長の人生に重ねる形で描かれた。
第1回では、幼いまひろが飼っていた鳥を逃がしてしまい、三郎(道長の幼名)に出会った。後にまひろは、このことを思い出して、源氏物語の「若紫」を書いた。
「鳥を追いかけて、(源氏物語の)若紫(後の紫の上)と(主人公の)光源氏の出会いみたいにしたらいい」と提案したのは倉本さんだったという。これがヒントになった。
文学考証の高野晴代さんの話を聞き、膨大な源氏物語を3年かけて熟読。「これは使える」というエピソードをストーリーに織り交ぜた。「『やんなきゃ』と思ったわけじゃない。その時々でうまくいった感じでした」
■陰気でとげのある人物
まひろを演じる吉高由里子については、「気難しい顔がすごく魅力的」と称賛する。まひろは、弟の惟規(のぶのり、高杉真宙)から、「ややこしい」「根が暗くてうっとおしい」といわれるような性格だ。
「まひろはとても気難しくて、陰気でとげのある人物。ヒロイン足りえないぐらい」。だが、吉高はそんな気難しいまひろを魅力的に演じた。
「いつも他のドラマで見せる綺麗な明るい笑顔とか悲しい顔とは違う。すごい気難しい顔で、ものを考えている時、セリフのないようなところでの気難しい顔を魅力的に、嫌味に見せないで表現できるのは、日本に他にいるのかなって思っちゃうぐらいすごい。今までの印象と全然違う女優になったと思います」(油原聡子)
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大石静
おおいし・しずか 東京都出身。多数のテレビドラマ脚本を執筆。主な作品に、連続テレビ小説「ふたりっ子」「オードリー」のほか、「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS系)、「知らなくていいコト」(日本テレビ系)。大河ドラマは「功名が辻」に続き2度目。
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