大腸がんは近年増加傾向にあり、誰にでもリスクがある病気ですが、初期症状がほとんどないため予防や早期発見が重要です。 【イラスト解説】肉食による「大腸がん」のリスク そこで大腸がんとはどのような病気なのか、そして特にどのような人がかかりやすいのかなどについて、鈴木謙一先生(横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院)に話を聞きました。
大腸がんにはどんな症状があるの?
編集部: 大腸がんについて教えてください。 鈴木先生: 大腸がんとは、大腸の内側の粘膜に発生する悪性腫瘍で、結腸や直腸に発生するがんを指します。 編集部: どんな症状があるのですか? 鈴木先生: 血便や便秘・下痢などの便通異常、ガス(おなら)が頻回に出るなどの症状が出ると言われていますが、多くの場合、大腸がんは進行するまで自覚症状がほとんどなく、初期の段階では気づきにくいという特徴があります。 編集部: 大腸がんになる人は多いのですか? 鈴木先生: そうですね。⽇本における大腸がんでの死亡者数は、およそ60年前から右肩上がりで増加中です。40歳代から増え始め、50~70歳代でとくに多くなります。 がん全体で見ても亡くなる人の多いがんで、大腸がんの死亡数は、女性で第1位、男性で第2位。発生数・死亡数ともに増加傾向にあるがんです。 編集部: 亡くなる人の多い、怖いがんなのですね。 鈴木先生: 数値で見るとそうかもしれませんが、大腸がん自体は、早期発見できれば内視鏡治療で完治できることがほとんどです。先述のように、初期症状がほとんどなく、発見が遅れる傾向があることから数は多くなってしまっています。
「早期であれば完治できる」大腸がんの治療法
編集部: 初期症状がないのに、どのようにして早期に発見するのでしょうか? 鈴木先生: 大腸内視鏡検査、いわゆる大腸カメラで発見することができます。また、大腸がんの前段階になりうる大腸ポリープの段階で発見し、切除することで予防にもつながります。それも大腸カメラで発見し、切除することができます。 編集部: では、大腸がんの治療について教えてください。 鈴木先生: 早期であれば内視鏡手術、つまりポリープと同じように内視鏡検査の時に切除することができます。 大きいものだったり、数が多かったりする場合は、検査の時ではなく、別の日に手術を行うこともありますが、いずれにせよ初期段階であれば多くの場合、お腹を切ることなく切除できます。 編集部: 進行していた場合はどのような治療をするのですか? 鈴木先生: 進行がんであれば、外科的⼿術、抗がん剤治療(化学療法)、放射線療法などの方法があります。転移がない場合は手術だけでの完治も期待できますが、そうではない場合は、手術にプラスして抗がん剤治療、放射線療法などが必要となる可能性が高くなってきます。
大腸がんの原因やなりやすい人がどういう人か教えて
編集部: 大腸がんの原因はなんですか? 鈴木先生: 直接的な原因とは言えませんが、例えば高脂肪食や加工肉(ソーセージ・ハムなど)・赤身肉をたくさん食べたり、野菜・果物の摂取不足だったりとの、関連が指摘されています。 過度な飲酒や喫煙などもリスク因子です。さらには、加齢や肥満も関連があると言われています。 編集部: ほかには何かありますか? 鈴木先生: 糖尿病や潰瘍性大腸炎の方や食道がんと診断された方、家族に大腸がん・大腸ポリープの方がいる場合も注意が必要です。 編集部: 大腸ポリープであっても注意が必要なのですね。 鈴木先生: そうですね。さらには「大腸ポリープ」といっても種類があり、大腸がんと関連の深いタイプのポリープがあることがわかっています。 日本ではまだ明確な基準は定められていませんが、例えばアメリカの消化器病学会では、以下のポリープを切除した方は、大腸がんになりやすいと示しています。 ・早期大腸がんであった ・絨毛腺腫であった ・10mm以上の大きさの腺腫 ・SSA/P(sessile serrated adenoma/polyp)であった ・3個以上の大腸ポリープがあった 編集部: 最後に読者へのメッセージをお願いします。 鈴木先生: 大腸がんは、ほとんどが無自覚のまま発生して進行していきます。そのため、症状が出てきた段階では、すでに進行がんとなっているケースが非常に多いのが現状です。 40歳を過ぎたら、一度は大腸カメラを受けて、ご自身が大腸がんになりやすいタイプなのかを知ることが大切です。 また、大腸がんの前病変である大腸ポリープを早期に発見して早期に治療していくことで大腸がんの予防にもなるため、そういった意味でも定期的な大腸カメラをお勧めします。
編集部まとめ
大腸がんは増加傾向にあり、誰にとっても無関係ではない病気です。リスクを理解し、日常から予防と早期発見を意識することが大事とのことでした。 気になる症状のある人はもちろん、症状のない方も、40歳を過ぎたらまず一度、大腸カメラの検査を受けることをお勧めします。
【この記事の監修医師】 鈴木 謙一 先生(横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック 横浜駅院) 埼玉医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院や昭和大学横浜市北部病院消化器センターなどで経験を積み、2024年に横浜ベイクォーター内科・消化器内視鏡クリニック横浜駅院を開院、院長となる。日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医、日本消化管学会認定胃腸科専門医、日本内科学会認定認定内科医、日本消化器内視鏡学会認定上部消化管内視鏡スクリーニング認定医・大腸内視鏡スクリーニング認定医、日本ヘリコバクター学会認定H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医。
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